あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。






 とたんに景色が変わる。


 目の前に現れたのは、黒の大理石の壁にその前を走り回る大慌てのメイドたち。


 俺が現れたのを見ると、慌てて整列しようとした。



「今はいい。 それより、まおはっ……」

「こっちだぜ、王子」

「……シュガー」



 焦る俺に話しかけてきたのは、黒猫姿のまおの使い魔、シュガーだった。


魔力を高めているのだろう。


主人でない俺でも、黒猫姿のシュガーの言葉が聞き取れる。


ふと、視線を下に降ろすとその足の歩みが少し弱々しい。


本来使い魔と術者はいつも繋がっていて、術者が気を失うと、大抵使い魔も意識を失ってしまう。


けれど、シュガーは己の中の魔力を最大限に引き出し、意識をどうにか繋いでいるようだった。


 シュガーについていくと、そこは城の救護室のような場所だった。


 その中に、まおがいるという。


 恐る恐る部屋に入ると、そこは簡素な作りで、ベッドだけがぽつりと置かれていた。


そしてそのベッドの上にはまおが横たわっていた。


 昨日の夜の暗闇の時には気づけなかったが、少し顔色が悪く、さらに少し痩せたように見えた。


 ちゃんと飯を食べていたのだろうか。


 訓練ばかりで、疲れていたのだろう。



「まおは、なんで……」



 ベッドに飛び乗り、まおに寄り添ったシュガーに問うと、シュガーは眉をひそめる。



「わからないか?」

「……?」



 なにが?


 そう言おうとして、息をのんだ。


 これは……。


 窓に駆けより、さらに遠くの方を見つめる。


 ウェズリアとオスガリアの境目には──透明で目を懲らさないと見えないような、国を覆うほどの大きな防御結界が張られていた。



「まさか、まおひとりで……?」

「……ああ、そのまさかだ」



 ウソだ、と思った。


 こんなの、ひとりでできるわけない。