あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。






 あたしは縮こまった。


この王子様、不機嫌になるんだ……。


無表情だなあとは思ってたけど……。


あたしのバイブルの王子様は優しい太陽みたいな人だったし、この人もそうだと思い込んでいたから、その差に驚きを隠せない。


なんとなく顔が合わせづらくなってしまい、彼の腰に回した腕に力を込めて俯いた。


 それを確認した彼は馬の手綱を引いた。


 ヒヒーンと馬が高くいななき、黒馬は素早く駆け出した。


 景色が、後ろに流れていく。


 馬に乗ったことのないあたしなのに、なぜかちゃんと乗っていられる。


 それはきっと、王子様のおかげ……。



「このお馬さん、なんという名前なんですか?」

「こいつか?」



不機嫌だったとしてもきちんと質問には答えてくれるらしい。



「こいつは、俺の相棒で、ボルトという」

「ボルト……カッコイイ名前ですね」



 すると、ボルトはヒヒーンとまた高くいなないた。


 まるで、お礼を言っているみたい。


 あたしは思わず笑ってしまった。


ボルトは鬣が長く美しくて、綺麗に編み込まれている。


きっと乗るときに邪魔にならないようにしてあるんだ。



「あの、あなたは王子様ですよね?」


 
 表情が見えないため、広い彼の背中に話しかける。



「確かに俺は王子だ」

「どこの国のですか?」

「俺は、魔界の王子だ」



 ふぁっ!? 


 息が止まったかと思った。


 この人、魔界の王子様ですか!


 いやー、びっくり。


 想像と全然違うんだもん。
 

 てっきり、魔界の王子様って、角と牙がはえてて、目が赤くて、人を食べる……みたいな感じだと思ってた。


 けど、普通にカッコイイし、王子様の代表みたいな顔つきだし……。


 まさか、魔界のとは思わなかった。



「あの、名前伺ってもよろしいですか?」



 できるかぎり、この王子様のことを知りたい。


そう思った。