城に帰るなり、俺はメイドにまおを風呂に入れるよう命じた。


突然帰還した王子に驚いた様子だったメイドたちも、俺の腕の中で眠るまおの姿を見ればすぐに事態を把握したようで、水を得た魚のように慌ただしく動き始めた。


 まおを託した後、一旦部屋に戻り、自室につけられた簡易的な入浴場で魔術によって早急に身体の汚れを落とし、汚れた軍服からラフな格好へと着替える。


 そして、まおの部屋を訪れるころには、まおは部屋に運ばれ、眠っていた。


 俺は、ベッドの横に椅子をつけ、まおの額に手を置いた。


ふわりとした、柔らかい洗い立ての石鹸の匂いが辺りを包んでいる。


 ……熱は、ないな。


 まおが眠りつづけているのは、魔力の消耗が激しかったからだ。


 城を覆うほど大きな結界を張るだけでも、厳しいものなのに、さらに四つの結界を操作していた。


 それは、魔術師にとって、どれほどの疲労になるのか。


 まおのことだから、周りには辛くても黙っていたのだろう。


いや、もしかしたら気付いてすらいなかったのかもしれない。


 
「バカみたいに、優しすぎるんだ。 君は……」


 
 まおは元気で、無邪気で、とても前向きで……見ていて飽きなくて。


 会ってまだ日が少ないのに、ずっと前から隣にいるような錯覚に襲われてしまう。