あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。



ドラゴンは、既にあたししか目に入っていないようだった。


低い唸り声は、あたしが一歩前に踏み出すたびに低く、大きくなっていく。


それでもあたしは、ドラゴンの瞳を見つめたまま、引くということをしない。


ついに、ドラゴンとの距離は十メートルを切った。


ドラゴンの怒りが最高潮に達した。


「危ない!」


鋭い牙の並んだ口を大きく開き、仰け反る。


その中に見えたのは、鮮紅色。


刹那、そこから灼熱の焔が吐き出された。


「まおさん!」


隊員たちは、魔方陣を出して自分をかばうものの、当然、十メートル離れた場所にいたあたしには直撃で……。


辺りの草花が焦げ付き、煙をあげる。


「そんな!」

「まおさん!」


隊員たちの間で、ざわめきが起こる。


焔は、あたしを焼き払った──はずだった。


「ちょっと、勝手に殺さないでね!」


隊員たちに向かってひらひらと手のひらを翻すと、彼らの顔には驚きと安堵が広がる。


「何故……!」

「これ、着てるからね!」


そう言って二の腕にデコピンを食らわすと、あたしの肌の表面は、虹色に輝いた。


「それは、防御結界⁉︎」

「そう! だけど、詳しいことはあとで!」


あたしを焼き払ったと思っていたのか、ドラゴンは攻撃の手を緩めていた。


今は、突然のことに理解が出来ず、その場に突っ立っている。


「アカシ!」


そのすきにアカシをこの手の中に紫色の光とともに召喚する。


『何用だ、我が主よ』

「あいつ! ドラゴン眠らせて!」

『承知した』

「いくよ!」


アカシを両手で持ち替え、その場に突き立てた。


途端に地面に広がるアカシの強大な魔力。


すると、フッとドラゴンから力が抜け、凄まじい音と共に地面に倒れこんだのだった。