あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。




急に上空へと飛び上がった事で町民たちは何事かと空を見上げ、ざわめき立てる。


しかし、あたしの背中にある紋章を見て事態を把握し、納得した。


風が耳元でびゅうびゅうと唸っている。


髪とマントが激しく煽られ、バランスを崩しかけるも、箒にしがみついてなんとか体制を立て直す。


「方角はわかる?」

〈このまま真っ直ぐ! ちょっと飛ばすぞ!〉

「わかった!」


返事をした途端、体感する風の速度が桁違いに強くなる。


呼吸もままならないような風のなか、身体を丸めて耐えていると、風が唐突に弱まった。


さすがというべきか、既に眼下に目標地点が見えていた。


〈戦況は?〉

「護衛隊が何者かと争ってる……でも、あれは何?」


黒くて見る限りでは、人の何倍も大きい。


すると、それは身震いをして、背中から大きななにかを左右に広げた。


──翼だ。


「あれは……ドラゴン⁉︎」


間違いない。


爬虫類のような出で立ちに、コウモリのような巨大な翼。


鋭い牙と、鉤爪。


さらに魔力を有しているようで、その漆黒の煌めく身体から濃厚なオーラを滲みださせている。


「この国、ドラゴンいるの⁉︎」

〈ああ。 滅多に人前に姿を現さないが、森の奥や、山脈、泉の底など自然中に潜んでいるらしい〉


どうしてドラゴンがまたこんな時に?


〈もしかすると、ここ最近のオスガリアとの戦争のせいで、自然の物が怒っているのかもしれないな〉

「それなら、鎮めて元の場所に戻さないと!」

〈護衛隊の奴らはそれを目的にしているだろうが、もし、あまりにも抵抗した場合……駆除、ということになるかもしれない〉

「そんな!」

〈けれど、基本的にウェズリアでは不必要に自然の生き物を殺生してはいけないんだ。 魔力の質は、自然の豊かさに比例するからな。 だから、どうしようもない時だけだ〉

「とりあえず、降りてあたしたちも応戦しないと!」


今は、状況確認のため、ドラゴンたちの上空を巡回していた。


箒の先を下へ向け、下降を始める。


ドラゴンは唸りを上げ、その鉤爪を振り回していて、護衛隊たちも迂闊に近づけないらしい。


そのドラゴンの攻撃範囲内に入らぬよう、少し離れた場所へと降りた。


「まおさん!」


あたしの存在に気づいたフランさんが、駆け寄って来た。


「遅くなってすみません! 怪我人などはいませんか?」

「こちらは大丈夫。 それより、ドラゴンの怒りを納めて元いた場所へ戻ってもらわねば……」


このままでは、ドラゴンは王都に侵入してきてしまう。


ドラゴンの身体は十メートルを優に越すため、王都に侵入されたら街はひとたまりもなく破壊されてしまうはずだ。