よしよし。
こういうときのヒロインは気を失っているものだ(偏見)。
それを王子様が見つけて、お城まで連れて行って介抱してくれるはず。
ならば、今すぐここに寝そべって寝たふりを……って、待てよ。
それでもそれが王子様であるとは限らない。
もしかすると、魔界の者とか……?
あり得るあり得る!
だってここ、見るからに魔界みたいだし!
もし、王子様じゃなかったらあたしは魔界の者に頭からボリボリ食べられて終わりだ。
そうなってしまうのは、なんとしてでも避けたい。
息を潜め、身体を小さくし、近くの岩影に身を潜める。
誰……?
足音は、どんどん大きくなる。
こっちに、来てる。
それと同時に、鼓動もドクン、ドクンと大きくなる。
しばらくすると、足音が止んだ。
「──誰か、そこにいるのか?」
カッコイイ、低い、バリトンボイスが、お腹の奥の方に響く。
まるで声優でもやっているみたいな綺麗な声。
なんだか、心地好いような……。
って、は!
ボーッとしてる場合じゃなかった!
もしかすると、運命の王子様かもしれないじゃん!
こんなカッコイイ声だし!
会わずに後悔するより、会ってから後悔した方がいい!
あたしは、意を決して恐る恐る岩影から、姿を現した。
「──お前は……」
「すみません、助けてください」
ここで変なことを言って誤解されるのも嫌だ。
こういう時、あたしのバイブルによればだいたいが王子様とかでお城に連れて行ってもらえる……という流れなんだけど。
けど、これは現実で。
そんな小説のことを全部真に受ければ大変だ。
だってこの人が王子様とは限らないんだもの。
それにどんな相手だろうと下手に抵抗すれば命がどうなるかわかったもんじゃない。
ここは異世界(仮)!
変なことをしたら死ぬ!
こうなったら、素直になったもん勝ちだ!

![あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]](https://www.no-ichigo.jp/img/member/684618/kvlyibwqof-thumb.jpg)

