見れば、あの美しい顔が僅かに歪んでいる。


 プライド、傷つけちゃったかな……。


 でもっ!


 血を吸われたら、死ぬわーっ!


 百面相のようにヘンな顔をしているあたしを見ていた彼は、ますます美しい顔を歪める。


 そして、



「もういい」



 そう言った。


 呆れたような顔をしている。



「萎えた」

「…………」



 つまり、血を吸う気はなくなった……そういうこと?


 それにしても、萎えたって!


 いくらなんでも酷くないですか!?



「さっさと出ていけ。 ここは、お前のいるべきところではない」


 
 シッシッと、まるで猫を追い払うようにしてあたしに向かって手を振る彼。



「ちょっとあんた……!」

「“あんた”なんて名前じゃない」

「じゃあなんなの?」



 あたしは半分キレ気味。


先程感じていた恐怖は何処へやら。


怒りだけがあたしを支配していて、全く怖気を見せずにヴァンパイアに言いかかる。


 彼はわずかに間を置くと……



「──アルバート」



 そう呟いた。



「アルバート……」



 いかにも外国人、ヴァンパイアって感じ。