昼休みになって、暁月が洋平を起こした。

「あれ…俺…」

「洋平寝過ぎ」

 洋平の目の前には暁月たちが食堂で買ってきた昼飯が並べられてて、洋平は少し焦った。

「どれくらい残ってた?」

 瑞稀に聞くと、瑞稀は「そういえば…」と暁月を指差した。

「暁月が洋平の分も買ってたぞ」

「え?まじで?」

「暁月、洋平の飯どれ?」

 瑞稀が咲夜とふざけ合ってる暁月に聞く。

「これかこれ、好きなの食っていいぞ」

 暁月はふざけるのをやめて、唐揚げ弁当とカレーライスを洋平の前に置いて、洋平と自分の机をくっつけて隣に座った。

 カレー好きな暁月に遠慮して、洋平は唐揚げ弁当を手にとった。

「さんきゅ」

「いつも奢ってもらってるからな!今日は俺の奢り!」

 偉そうに反り返る暁月を、瑞稀と咲夜が指を差して笑う。

「暁月、お前いつも洋平がいくら払ってるか知ってんのか?」

「唐揚げ弁当で奢りとか、それワンコイン以下だぞ!」

「なっ…うるさいうるさい!ワンコインじゃない!フォーコインだ!」

 暁月の言い返しに一瞬二人の笑いが止まって、再び笑い出した二人の声は先ほどよりも大きくなった。

「フォーコインって!!フォーコイン…!!腹が痛い!!」

「いいか、暁月、ワンコインってのはな、100円玉のことじゃないんだぞ」

 暁月は瑞稀の言葉を聞いて、洋平を見た。

「なんだよ」

「ワンコインって、100円じゃないのか?」

「ああ、基本500円だな」

「知らなかった…」

 暁月は「そうなのか…」と何度も繰り返し、ワンコインが500円であることを噛み締めた。

 そんな可愛い反応を前にしても、もう暁月に手を出せないもどかしさが洋平をイラつかせた。