洋平は昔のことを思い出していた。

 あれから半年後、暁月が琉華と付き合うことになったと報告してきた。

 かねてから暁月が琉華に対して、熱っぽい視線を送っていたのには洋平も気付いていた。

 暁月本人にその気があったのかはわからないが、見惚れているのだけは周りから見ても明らかだった。

 洋平にとってその報告は意外性こそないものの、ショックはあった。

「じゃあ、これからは、俺のことは忘れて、あいつと仲良くやれ」

「お、おう」

 そのときの暁月はぎこちなく返事をして、洋平から目をそらした。

 その後、洋平は、琉華に暁月の弱点を教えたり、暁月にテクニックを教えたり、二人の関係を応援するようなことをした。

 洋平も新しく彼女を作ったりして、もう暁月に気がないことをアピールした。

 自分でもよくわからないが、洋平はそれで良いのだと思っていた。

「よーへー…?起きてたの…?」

 隣で眠っていた暁月が目を覚ました。

 未練があったわけじゃないのに、暁月が部屋に泊まりに来たとき、洋平は思わず行為に及んでしまった。

 暁月も抵抗しないから、洋平は暁月が琉華と別れたのかと思い込んでいたが、どうやらそうではなかったらしい。

「なんか、目が覚めちまって…」

「ん…そうか…俺はもうちょっと寝る」

 眠そうな声で言って、暁月はもう一度寝息を立て始めた。

 暁月が何を考えているのか、洋平にはわからなかったが、今隣に暁月がいてくれることで全て満たされた気がした。

「音駒にはいろいろ教えたけど、指だけでイカせたことあんのは俺だけだろうな…」

 しみじみとそう呟いて、洋平は目を閉じた。