いつから、なんてわからない。


 物心ついたときには、もうそこにいた。



『郁人くん、そんな顔しなくてもいいじゃないか』


『……だって、どうせもう川で遊ぶなって言うんだろ』


『熱を出したことを怒ってるんじゃないよ。ただ、そうやってそっぽを向いていると、お母さんが心配するだろう?』



 人が好きかと問われれば、是と答える。


 人が嫌いかと問われれば、否と答える。



『郁人くん、私は人が好きだよ。君も、隼斗くんも、彩子さんも、患者さんも、みんな大好きだ。

 けれど、ひとつだけ嫌いな人がいる。それは、命を大切にしない人だ。いいかい、君はそういう人になってはいけないよ』



 わかっている。そんなことは。


 わかっているから、守ってきたんだ……。