「どっちも親だ。病弱なおふくろと経済力のある親父。選べと言われたら悩むまでもないだろ。どうせなら郁人もついてくればよかったんだ。

 だがアイツはそうしなかっただろ。わざわざ残って、最後には家出までして、アイツがおふくろの死期を早めた。違うか?」


「……それはっ!」


「郁人もそうだろう。俺と親父がおふくろを捨てたと考えているな? とんだ勘違いだな」



 あざけるように笑い……ふと興味を失くしたかのように顔を逸らす。



「捨てられたのは、俺たち子供のほうだ」



 出て行った親父が悪い。

 帰ってきた親父を、受け入れなかったおふくろも悪い。


 彼はそう言っている。

 ……それは。