黒十字、邪悪なり

「悲鳴なんか上げるんじゃない」

口角を吊り上げて、男は笑う。

「悲鳴なんてのは、可愛らしい娘の上げるもんだ。てめぇみたいなブスが上げたって、誰も助けてやろうなんて思やしねぇぜ?」

「ひ、酷い…」

顔を歪め、今にも泣きそうな声を上げる娘。

恐怖か嗚咽か、華奢な肩が震える。

「私が何をしたっていうんですかっ、何で私にこんな事っ…」

掠れた声で言う少女に対し。

「愉悦」

男はもう一度笑った。

「狩る為だ。狩りは楽しい。追いかけて追い詰めてトドメを刺すのは最高だ」