全身から滴る血。

邪悪は微かに息を荒げる。

この強力な化け物が、呼吸を乱すのは本当に珍しい事だった。

しかもそれが人間相手などと。

呼吸を乱す事すら何十年、いや何百年ぶりかというのに。

「素晴らしい…やるじゃないか人間」

朱に染まった顔で邪悪が笑う。

「とうの昔に失望し、取るに足りない存在と認識していた人間に、まだここまでの使い手がいたとは。勇者、英雄、救世主…この世に強者は数多存在すれど、人類の希望になり得る者はいつだって人間だった…この世を救うのはいつでも人間だ。ならば祓魔師」

邪悪は二挺拳銃を握り締める。

「貴様はこの世を救う英雄となるか?久しくこの世に現れなかった、救世主となるか?」