効いている。

確かに邪悪にダメージを与えている!

ヨセフは刺さった聖釘を引き抜いて、今度は邪悪の心臓目掛けて突き立てようとするものの。

「ぬうぅうぅうぅうっ!」

形振り構わぬ邪悪の二挺拳銃による乱射!

ヨセフは咄嗟に距離を置き、体術を駆使してその射撃を躱した。

「……」

ボタボタと、今なお零れ落ちる流血を抑えようと、傷口に手を当てる邪悪。

彼が傷を庇う仕草を見せるのは、初めての事かもしれない。

殺せるのだ。

黒十字 邪悪は不死身ではない。

彼は、決して死なない化け物ではないのだ。

「…愉しませてくれる…人間」

笑みを浮かべる邪悪。

だがそれは嘲りでも挑発でもなく、人の身で高位の化け物をここまで追い詰めた事に対する、称賛の笑みだった。