「御構い無く」

ニッコリと笑って。

「!?」

助走もなく、大して力を込めるでもなく。

その場跳びの脚力だけで、セシルは屋上へと飛び上がった!

どうしてもその容姿のせいで忘れてしまいがちだが、彼女は人間ではないのだ。

吸血鬼の真祖。

ならば数メートル程度の高さなと、容易く飛び上がれるだけの身体能力を持っていて当然。

努々覚えておく事だ。

彼女は化け物なのだ。

万が一裏切られ、寝首を掻かれる事になれば、ヨセフはどんな目に遭う事か…。