下り続ける事、凡そ一時間。

目前の薄暗い通路の先に、錆びて赤茶けた鉄扉が見えた。

セシルが迷う事なくその扉を開けると。

「!」

そこは建物の屋上へと繋がっていた。

テレビのアンテナや洗濯物をぶら下げる為の縄が縦横無尽に張り巡らされていて、生活の香りが漂う。

屋上には給水タンク。

都市にちゃんとした水道はなく、業者がポンプで地下水を汲み上げて配水している。

ゴムホースが給水管の代わりだ。

外側から見ると巨大なコンクリートの塊に見えた都市も、屋上から見れば小さなビルの集合体である事がよくわかる。

ビルによって高さはまちまち。

一番高い建物は、10年前に地上102メートルもあった超高層ビル。

いまや老朽化が進んで見る影もないが。