「……あはっ、何でだろうね」

ヨセフに凄い剣幕で怒鳴られたにもかかわらず、セシルは寧ろ笑ってしまっていた。

「サーの眷属になってもう10年になるっていうのに…まだ人間の感覚が抜けてないのかな…貴方の危機を見てたら、反射的に助けちゃって…」

「戯言を」

手にしたままの鍼を握り締め、ヨセフは睨んだ。

「そうやって油断を誘っておいて、隙を突いて殺すつもりか」

「そ、そんな事しないよっ」

セシルは両手を振って否定した。

「…そりゃあ、ベナルはお互い共通の敵だし、一人でアイツを相手するよりは、一時的にでも共闘した方が有利かなぁなんて、打算的な事は考えたけどさ」

「……」