黒十字、邪悪なり

家族を未曽有の大災厄によって全て失い、ただ一人生き残った奇跡の子供。

本来ならば美談として、ニュースや新聞で取り沙汰される所だろう。

しかし神父は、あまりに多くのものを失い過ぎたこの少年が、マスコミの好奇の視線に晒される事を不憫に思い、この事実を公表しなかった。

そのまま少年を、自らの教会へと連れ帰り、我が子同然に育てた。

両親の代わりに惜しみなく愛を注ぎ、兄弟の代わりに遊び相手となり、祖父母の代わりに時には叱り、教師の代わりにあらゆる知識を与えた。