黒十字、邪悪なり

だが。

ベナル大災厄には続きがある。

男が死に、女が死に、老人が死に、若者が死に、兄が死に、姉が死に、弟が死に、妹が死に、親が死に、友人が死に。

全てが死に絶えたと伝えられているこの事件。

実は奇跡的に、一人だけ生存者がいた。

災害現場を捜索していた、自衛隊や各国の救助隊。

その中に混じって、ボランティアでカトリック教会の信徒達も復旧活動にあたっていた。

その中の一人である神父が、幼い少年を発見したのだ。

駅前通りの地下道の、奥まった公衆トイレの一番奥の個室。

その中で一人怯えて震え続ける、小さな男の子だった。