「どうだお嬢ちゃん、気分は」

傍らで邪悪が呟く。

同胞が増えた。

しかしその割に、邪悪は不機嫌そうだった。

彼は期待していたのか。

セシル・カイルという『人間』に。

絶望も恐怖も突っぱねて、人間であろうとする強い意志を持っていると、彼女に期待していたのか。

それとも、見苦しくも抵抗して、邪悪を愉しませてくれる『お気に入りの玩具』と見ていたのか。

果たしてどちらなのか、定かではないが。

「ようこそセシル・カイル。『こちら側』へ」

邪悪はおどけたように言った。