「弱しっ!」

席を立ったベナルが笑う。

「弱しっ!弱し弱し弱し弱し弱し弱し!人間とはこうも弱く、脆弱で貧弱で惰弱なものか!貴様も笑ってやれジャーク!」

嘲るように、見下すように。

ベナルはただ一人生き残った、生き残ってしまったセシルを笑う。

仲間が死んだくらいで絶望するのかと。

一人になったくらいで絶望するのかと。

これから死ぬくらいで絶望するのかと。

それは、無慈悲で冷酷で残忍で命を何とも思わない化け物には理解し難い事。

限りある命だからこそ必死に足掻き、命を尊び、他者の命をも救おうとする人間など、化け物風情に理解できる筈もなかった。