【舞華side】


「ねぇねぇっ!WISHのアルバム買った?」
「うん!超イケボだったぁ…」
教室の所々から聞こえる黄色い声。
…はぁ、うるさい。
…女子たちが騒いでるWISHって奴は歌を聞いた途端ミキシングで誤魔化してるってすぐにわかった。
嫌い。そうゆう奴。
何がイケボだ。
流くんに勝るイケボなんてあるわけないだろ。
私――、紺野舞華、17歳。
趣味は好きなアニメをリピート再生すること。
最近のお気に入りは“片翼の涙”。
その中でも早見流くんってキャラが好き。
―――なんて言ったって誰も理解してくれない。何なんだろう、二次元が好きって言うだけで女子たちは“キモい”って言って離れてく。
…酷いよ、ただ好きなだけなのに。
「舞華ちゃん、何聞いてるの?あ、もしかしてWISHのアルバム!?」
「うちらと一緒に語ろっ♪」
「あ、うん……。」
…ほら、嫌なはずなのに。
人がもう離れていかないように“偽りの自分”まで作って。
ほんと何なの。私、何がしたいの?
毎日毎日、自分に嘘ついて。
そんな私が私は大っ嫌い。

「あ、そうそう。この間ね、ラインでよさそうな子見つけたんだけど、“二次元好き”とか言っててキモいからやめたw」
「二次元好きとかあり得ないよねーw」
何なの、最低。
二次元好きの否定ばっかして。
ムカつく、ムカつくムカつく…!
「……な………い」
「ん?舞華ちゃんどしたの?」
「そんなこと、ない。二次元好き、キモくない。私だって、二次元、好きだもん。」

…言っちゃった。

「…あっそ。んじゃもう舞華ちゃんとは仲良くしないから。」
離れてく二人。

そう、これでよかったの。

…これで、よかったの。