ドッペル・ゲンガー

 教育熱心な家庭だったらきっとあれは駄目とか、これは駄目なんて言われていたんだろう。

 どっちの方がいいのかは分からないけど、とにかくうちは、自分らしくありなさいというのがお母さんの口癖だった。

「たまには家事の手伝いもやりなさいよ? これからはお姉ちゃんだって彰吾に頼む事増えるかも知れないんだからね」

 大して返事を期待せずに洗い物を済ませると、私はもう一度「ごちそうさま」とお母さんに言って、バスルームへと向かった。

 脱いだブラウスなどを洗濯機に放り込んでバスルームに入る。

 キュッ、と栓を捻ると涼しげな音とともに噴き出した水から数秒もしない内に湯気が上がった。

 夏場はお風呂に浸かるとすぐにのぼせてしまうので、シャワーで済ます事が多い。

 まずは化粧を落とそうと、クレンジングに手を伸ばした。

 濃い目に施された化粧がみるみる落ちて、本来の私の顔が鏡に映った。

 私って童顔なんだよな……

 私の顔は中学生の頃からあまり変わっていないように思う。

 中学生……

 少し胸がチクリとした。

 あまり思い出したくない苦い思い出。

 不意に蘇った過去を振り払うようにして頭からお湯をかぶると、そのままシャンプーと一緒に洗い流したーー