ドッペル・ゲンガー

 この服どこかで……

「起きたんだね」

 違和感の正体に気付きかけたところで、姿勢はそのまま、背中越しに声が向けられた。

「それじゃあ、始めよっか」

 何を言ってるんだろうこの子は。

 私が言葉の意味を理解するよりも早く、彼女はゆっくりと立ち上がった。

「……っ!」

 息を飲んだ私が伸ばした視線の先。立ち上がった彼女のだらんと垂らした左手には、暗闇の中、わずかな光を受けて鈍く光る包丁がゆらゆらと揺らめいていた。

「すぐに終わるから。ちょっとだけ大人しくしてて。ね?」

 彼女がゆっくりとこちらへ振り返る。

「いやっ……」

 短い悲鳴を上げた私はそのままゆっくりと後ずさった。

「どうして逃げるの? これはあなたが望んだ事なのに」

 私と向かい合った彼女は不思議そうにそうつぶやくと、右足を前に出した。