ドッペル・ゲンガー

 誰……?

 視界の右端。食卓用のテーブルには、こちらに背を向けて椅子に腰掛ける一人の人物の姿があった。

 私は不審に思い足を止める。

 顔は当然見えないけど、肩甲骨あたりまで垂れ下がった髪から推測するに、相手は女の人だ。一瞬、お母さん? と思ったけど、少し暗闇に慣れた目で観察してみると、すぐに違うと分かった。

 服装が明らかにお母さんとは違う。どちらかと言えば私と同年代ぐらいの女の子が着るような服装だ。

 何だろう、この感覚。

 不思議な感覚が急に私を襲った。

 ……そんな事よりも。

 意識を再び目の前の女の子に向ける。

 彼女はこちらを振り返る事もなく、ただ椅子に腰かけたまま微動だにしなかった。

 物音やさっきの私の声でとっくに私の存在には気付いているはず。なのに、彼女はまるで聞こえていなかったかのようにその場で佇んでいた。