「おっつかれー! 美咲、あんたどうしたの? あんな事滅多に見ないからびっくりしたよ。何、居眠りでもしてた?」

 チャイムが鳴って、今日も元気な志乃がこちらにやってくる。

「いや、居眠りじゃないんだけど……」

「そっか。まあ美咲でもたまにはそういう事あるよね。何々? もしかして恋煩いとか?」

「ち、違うってば!」

 ニヤニヤと視線を向ける志乃の言葉を否定する。

「なーんだ」と志乃は少し肩を落とした。

「美咲ってさ、そういう話あんまりしないけど、好きな人とかいないわけ?」

 隣の空いた席にどかっと腰を下ろす志乃の瞳が興味津々といった様子で色を帯びた。