くいっと手招きをする男。

 挑発しているのか、それとも別の意図があるのか。

「信じてないだろ? 本当だぜ? これはお前自身が望んだ事だよ。だから、終わらせるのは他でもない、お前だ」

 俺が一体何を望んだんだ。

 気がつけば誰もいない世界に放り出されて、おまけにわけの分からない奴に命を狙われて……

「お前……ふざけんなよ……」

 理不尽な状況と、男の言葉によって頭に血が昇った俺は覚悟を決めた。

 やってやるよ。それで終わるなら。

「うおらぁぁぁあぁっっ」

 真っすぐに相手との距離を詰める。

 鉄パイプを振りかぶる暇なんて与えない。

 懐に飛び込んだら、思い切り吹っ飛ばしてやる。

 俺は姿勢を低くした。

「……大丈夫。"お前自身"は残るから」

 最後に俺が目にしたのは、素早く身を翻して鉄パイプを振りかぶる"俺自身"の姿だったーー