ドッペル・ゲンガー

「家に帰って、晩飯ができるまで寝てたんだよ。で、起きたら家の中が停電しててさ。雷でも鳴ってんのかなと思って通りを見たら人影が見えて……そいつを追いかけて行ったら学校に着いて……」

 それまで順調だった透の説明がそこで途絶えた。

 どうしたのかと表情を窺うと、透は眉間に皺を寄せて何やら考え込んでいた。

「……それで?」

 良い話でない事は表情で分かった。

 はやる気持ちをできるだけ抑えながら、私は続きを促した。

「美咲は"ドッペルゲンガー"って知ってるか?」

 大体の予想はしていた。

 私は黙ってうなずく。

「追いかけてた人影……俺だったんだよ。……いや、俺っていうか、そっくりな別人っていうか……」

「私も会ったよ」

 確信を持てないような言い方だったので、私は口を開いた。

 透の目が見開く。

「私は包丁を持って追いかけられた。それで……殺されかけた」

 透の表情がみるみる内に曇っていく。

「透は? そいつに何されたの?」

 穏やかな口調で問いかける。

「俺も似たようなもんだな。まあ、俺の場合は凶器になるようなものは持ってなかったけど。とにかく、話している内に様子が変わって……それで身の危険を感じたからすぐに逃げ出してきたんだ」