ドッペル・ゲンガー

 あれこれと考えながら歩いていたので、私は学校まであと少しのところまでやってきていた。

 妙な物音が聞こえてきたのは、意識を学校の方へと向けた瞬間だった。

 近い……

 おそらく考え事のせいで注意が散漫になっていたのだろう。

 物音は、それが足音だと分かるぐらいまで迫っていた。

 こっちにやって来る……!

 すぐ目の前の民家の角。

 その右側から、足音はあろう事かこちらに向かってきていた。

 隠れる場所は……っ

 とっさに辺りを見渡したけど、残念な事に私が身を隠せるようなスペースは皆無だった。

 軽くパニック起こした頃にはもう角から人影が姿を現していた。

 反射的に私の体が固まる。

「え……?」

 けれど、すぐに私は驚きの声を上げていた。

「と、透?」

 ものすごい勢いで曲がってきたのと、私が角から数メートルほどの距離にいた事で一旦はすれ違ったけれど、横目にはっきりと捉えたその顔は紛れもなく透のものだった。

 走り去ろうとしていた透の背中が止まり、こちらへと振り返る。

「お前……美咲か?」

 警戒心を強く表に出しながら、透はにじり寄るようにして私の顔を確認した。