ドッペル・ゲンガー

 行くあてもなく歩いても仕方がないのは分かっているけど、かといって二人と合流しろと言われた以上、立ち止っているのも気が引けた。

 相変わらず真っ暗な道を、呼吸を整えながらふらふらと歩いた。

 たまに後ろへ振り返ってみたり、何か物音が聞こえないか耳を澄ましてみるけど、都合の良い偶然なんて起こるわけがない。

 自然と溜息がこぼれた。

 大吾と"私"はどうなったんだろう……

 深々と突き刺さった包丁が鮮明に蘇る。

 肩辺りだと見ていたけれど、実際のところは定かではない。

 暗がりだったのと、慌てていたせいで見誤っていたとして、もし万が一もっと体の中心に近いところに刺さっていたんだとしたら……

 その先は怖くて考えられなかった。

「大吾……」

 ぽつりとつぶやいた言葉は、暗闇に吸い込まれるようにして宙を舞った。

 とにかく、どうやって二人を捜そうか……

 頭の中を本題に戻す。

 志乃の家は……ここからだとちょっと厳しいな……

 志乃の自宅は近くの最寄駅から二駅隣の街にあった。

 この辺りの異変から察するに電車は動いていないだろうし、車通りもまったくないからタクシーを拾う事もできない。

 というより、財布すら持って出ていないのだから、仮に捕まえたとしても払うお金がなかった。

 だからと言って、歩いて行くのはあまりに無謀だ。

 それに、志乃が自宅にいる保証なんてどこにもない。

 現に私は自宅を飛び出してきている。

 私はその案を頭の中で却下した。