「あれ?五十嵐君?と…」
げ。最悪。

五十嵐の隣には…

「慎也。大学見学…今日だったのか。」
自分の父親がいた…


缶コーヒーをスルリと滑り落としてしまった。
呼び捨てされたからだ。

「え、何?」

はぁ…帰りたい。

「えーと…東君?案内ありがとう。」
「いえ。」

「っと、次の講義に行かないとな。慎也。此処に…「うるさい。」

慎也は、父親に…嫌悪感しかなかった。
今となっては…

「すまない。」
父親は、去っていった。

「…」
辺りがシーンと、静まった。


「…すみませんでした。東さん。」

「え?何が?只の親子喧嘩でしょ?」


“只の親子喧嘩”…

「まぁ、そんな感じです、かね…」
愛想笑いしながら、言った。

「静也君!君のお父さんは僕の憧れなんだ!」

(名前違うんだけど…ま。)
「東さん、次、どうするんです?」

「あ、そうだな…君たちの行きたい所案内してあげるけど?」

「良いんですか?」
五十嵐が東さんに聞いた。

「もちろん。って、行き尽くしちゃったからね。君たちの行きたい所…ある?」


「特に何も。」
バッサリ、慎也は言った。


「え、じゃあ!俺の行きたい所で良いか?」
「どーぞ。ご自由に。」


「いっよっしゃぁ!オペの体験室で!」

「そっか。都月君、君は…良いの?」


「えぇ。勿論。」

(ここ、来るつもりないだろうし…)
嫌な記憶がふと、頭によぎった。