マグカップの中には、銀色に輝く小さなリング。

……指輪?


「あぁ、冷や冷やしたよ。そのまま飲んじゃうかと思った」

隣でフェイは、胸をなで下ろすような仕草を取り、こちらに向かって微笑んだ。


「……これ、何?なんで指輪が」

「そうだね……ランディは鈍感だからなぁ」

「鈍感!!?し、失礼ね!!そんなことないわよ!」

嘲笑するように言うフェイに、少し苛立ちを覚え反論する。
私は鈍くなんかないわ……。

「ふふ、そうだね…ちゃんと言わないと…」

そういってフェイは、私からマグカップを回収し台所へと姿を消した。

直ぐに水音が聞こえ、フェイはマグカップの中に入っていた指輪だけを手にし、戻ってきた。



フェイは、私の目の前の床に片方の膝を立て、「お嬢様」とふざけるように笑った。

「な、なんなの…?」

「……ねえ、ランディ。これから色々あると思うんだ。ランディの優しい両親は死んじゃったし、それはもうどうしようもなくて……一人っ子のランディにはもう家族が居ない。だけど…」

少し俯きがちに、フェイは声を発する。
その表情は読み取れなくて、私は何が何だか状況が理解できていなかった。