あの日の出来事については、多くを語ったことはありません。



親しい友人にも両親にも語ったことはありません。



私が書いた小説、「生きること」をご存じでしょうか?



入院した主人公、七原聡が病院で前田祭という女の子と出会い、二人で一日一回、「やっちゃいけないことをする」という内容の話を書いたことがあります。



内容はかなり変えていますが、一部はノンフィクションです。



あの日の出来事。



つまりは、私自身が入院し、生きる希望をなくした瞬間でもありました。



章の最初にある、「白い世界」こそ私の本心を書きなぐったようなものです。


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この窓からいっそ飛び降りてみようか。

いや、でもそこの看護婦に見つけられて、奇跡的に命が助かるかもしれない。

いやいや、むしろ、自殺するなんてくそだ。

人生の最大の負けだと思う。




虐められてもなお、生きようとするほうがよっぽど人生では勝ち組だ。

自分で死を選ぶほど馬鹿らしいものはない。


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そして、その生きる希望を再びよみがえらせてくれた人こそ、前田祭のモデルとなったその人でした。