Successful Failure -短編集-





私は、上るのを諦め、自転車の向きを180°変えて、再び坂を下った。



そして、堤防の脇に自転車を止め、消波ブロックの上に乗って、海を見た。



緩やかな波が、足の直ぐ下のところまで押し寄せている。



冬場は、波が強いこの海も、夏には緩やかになる。



近所の子供たちは、砂浜に降りて、落ちている海藻を被ったりして遊んでいる。



ここに来ると、落ち着く。
嫌なことをすべて忘れさせてくれるような気がした。



それに水を差すかのように、後ろの方で声がした。



「お前、何やってんだよ!?」



私が振り返ると、私の自転車の周りを男の子が数人で囲んでいた。



「ハア?てめーにはカンケーねーだろ?」



「お前ら、今、この自転車盗もうとしてただろ!」



「言いがかりはよせよ!俺たちがそんな風に見えんのか、ア!?」



どうやら、私の自転車を盗もうとした、していないで男の子一人と数人がもめているみたいだ。



って、他人事じゃないか!