Successful Failure -短編集-





レンタルビデオ店は、家の近くの坂を下ったところにある。
この坂は、かなり急で、自転車で下るとスリルがあって楽しい。



坂に差し掛かると、風を追い抜いたような気分になって、何もかも吹っ飛んでしまいそうだった。



風になりたい。
そしたら、誰にも馬鹿にされることないのに。



レンタルビデオ店に着いた。



そこで、私は、女の子がヴァイオリン職人を目指している男の子と出会うストーリーのDVDとお姉ちゃんに頼まれたスナノの新曲を借りた。



そして、当然だけど、行きの坂は下りでも、帰りは、上り。



行きは楽だけど、帰りが困難なのが、坂。



とても、乗りながらじゃ無理なので、私は、自転車を押しながら坂を登った。



そして、ふと、後ろを振り返る。
そこには、海が広がっていた。



青い海が青い空と重なって、一体、どこからが海でどこからが空なのか、その境目が曖昧になっている。



それに横線を引くように、船がすーっと走っている。



この街で私が一番好きな景色。