寝れない幸子を余所に、朝はやってきた。時計の針は九時をすぎ、青年は朝食を食べていた。
               「遅い…。先生早く来てよぉ…。」
               青年はすごく小さな声でブツブツいいながら、お粥をスプーンでつついている。
               「先生、来たよ。」
               「その声は、幸子さんですね?今日はいよいよ調査の日ですよ!昨日寝れました?」
               幸子は閉めきったカーテンごしに言った。
               「もうぐっすり。」
               幸子がそう答えた瞬間、カーテンが急に開き青年の主治医である上沢がベットの横にある椅子に腰掛けた。
               「独り言かい?確かにこの広い病室に一人でいたら、暇だよな。」
               「まぁ…はい。」
               上沢は笑みを浮かべながら、青年の脈を計りだす。幸子は不安そうに青年を見ている。
               「ちゃんと飯も食べてるし、あと今日も便は出たよね?」
               「もち…。」
               青年はもちろん!と答えようとしたが、気付けば幸子は青年の耳元あたりを凝視していた。
               「ち、近いですよ!」
               「近いのか!早くトイレ行け!」
               青年は幸子を睨んだ。幸子は知らん顔をしていた。
               「だって、ホクロに毛が生えてる…。」
               幸子は呟いた。