「うん!」
               幸子は自分の忘れた記憶が元通りになることを知り、さっきまでの元気な姿に戻った。その元気な返事を聞いて、青年は安堵した。
               「じゃ、今から幸子さんの実家に行っ……。」
               「もう!こんな所にいた!まだ点滴は残っているから、病室に戻ってきて!」
               話の途中に割り込んできたのは、さっきまで青年がナンパ行為をしていた看護婦だった。青年は怒られたのに、なぜかニヤニヤしていた。
               「というわけなので、今日は…無理ですね。調査は明日行います。朝の十時に一階のロビー集合です。あと、しっかり寝てくださいよ!調査は長引くと予想していますからぁ〜。」
               長々といかにも探偵みたいな口調で明日の予定を言ったあと、青年は急いで病室へと帰っていった。
               「いや、私寝る必要ないから…。だって幽霊だも〜ん。」
               そういって幸子はベンチに寝そべった。
               一方その頃、青年はまた懲りずに看護婦に声をかけていたが、ナンパではなかった。
               「看護婦さん、日記とか書いてます?」
               「書いてるよ。あ〜でもこの頃は怪しいかも…。」
               「女性って日記書く確率高いんですよ?知ってました看護婦さん?」
               看護婦は青年の点滴を打ち終えると、懲りた様子で言った。
               「で、次はどのようなパターンで私をデートに誘うのよ?」
               「え?あ…あぁ…デートに誘うのはまた今度にします。今は調査があるんで。」
               青年は呆気なく答えた。