「無視できない、それが理由です…かぁ…。」
               彼女は呟いた。青年はまるでドラマの刑事が最後の決めゼリフを言い放ったような気分になった。だが、そのあとすぐに恥ずかしくなりまた言った。
               「いや、だから困ってる人、いや幽霊みたら、その…ねぇ?困るでしょう?アレ?まぁだから、助けないと…無視したら可愛そうでしょ?でしょ?ね!」
               明らかに動揺しているのが自分の頬の熱さでわかり、それを意識すると、どんどん顔が赤く染まっていく。そんなことも気にしない彼女は淡々と自己紹介をしだす。
               「私、神楽幸子(かぐらゆきこ)といいます。職業はペットショップで働いていたことは覚えているけど、給料は一八万くらいだったかな。歳は…確か二七、八、ん?六だ!六!二六歳!」
               「いえ、三十ですよね?三十路ですよ。幸子さん。」
               そういうと幸子は、もう得意となった〔はて?〕ポーズをとり青年も歳のことは触れないようにした。触れたら、幽霊であっても殴られたら痛そうだからだ。いや、痛いからだ。
               「では本題に入りますよ?と、その前にこの点滴終わりそうなので、はずしに行ってきます。あと熱も計らないといけないので、十五分後にここにきますから!」
               そういうと青年は早歩きで病室に戻って行った。その姿を見て幸子は悲しい表情になった。
               「あの子はきっと気付いてない…。なんで私が見えるのか。あの子に言うべきかしら?あなたはもう…。」
               幸子は独り言をやめた。いや、涙で止まってしまったのだ。
               同時刻、青年は可愛い看護婦さんに点滴をはずしてもらいウキウキしていた。そして青年は言った。
               「僕、いつまで生きれます?」