「お邪魔します。」
               凄く広い玄関に少々戸惑いながら、幸子の仏壇のある居間に案内された青年は、線香をあげる。幸子だけにではなく、弟の仏壇にも線香をあげた。
               「幸子さんはよく亡くなった弟さんの話をよくしていました。なんか約束があったとか…。」
               青年は自然な流れで尋ねてみた。
               「はい、幸子は健《たける》の誕生日には必ずプレゼントを買っていました。ほら、これがつい先日買ってきたラジコンカーです。今生きていたら健も二十五歳になって…ね。」
               悲しそうに話す幸子の母親が見つめていたのは古そうなノートだった。
               「お母さん、その健君の仏壇にある古いノート、見せて頂けないでしょうか?」
               少し常識がないことは承知の上だったが、母親は気にせず見せてくれた。
               そのノートにはこう書かれていた。
               【ゆきと、たけるのひみつノート】