本当につくづく嫌になっちゃう!

自分って何でこんなに方向音痴なのだろう。
確かに門を入って真っ直ぐ昇降口を目指したはずなのに、いつの間にか学校の裏に来てしまっていた。

「ふー。戻りますか…。」
私は、元来た道を引き返す。

それにしても、本当に綺麗な桜並木。
私は立ち止まってどこまでも続いていそうな桜の木を見ていた。
花が風に揺られ何枚もの花びらがまるで雪のように私に降り注ぐ。

「うわぁ、キレイ…そうだ!写メっとこう。」

制服のポケットから携帯を取り出し、この風景をおさめようとして、ふと人がいる事に気付く。


あぶない。あぶない。
気づかずに取るとこだった。

「あの…。」

恐る恐る近づきながら声をかける。
その人は、私に気づかず気持ち良さそうに眠っている。

端正で整った顔、猫っ毛で少し長めの髪は
太陽の光で茶色く透き通り、風に吹かれてふわふわと揺れていた。

「…キレイ。」

あまりにも綺麗で思わず口からこぼれる。

閉じられていた目がゆっくり開き
驚いたように私を見る。


二人の視線が絡む。


「…春…奈?!」

彼はそうつぶやき


次の瞬間


私は腕をぐいっと引っ張られ強く抱きしめられた。



「ずっと…会いたかった。」

その声は切なく、愛おしい気持ちが混ざっていた。

「あの!!あっ、あっあたし…」
びっくりして上手く話せない。

ハッとしたように、彼は腕を離した。
その隙に私も離れる。

「ごめん…。びっくり…したよね。」

彼はそういうと申し訳なさそうに
でも悲しそうに笑った。

そんな彼は、この陽だまりの中に
スッーっと消えてしまいそうに儚くて私は…


抱きしめられずに居られなかったんだ。


どれくらい時間が経ったのだろう。


「ねぇ…君、誰…?」

と言う言葉で我に帰った私。
一気に現実に戻される。


「すみません!わざとじゃなくて!
その…なんか…その…すみません!すみません!」

彼から離れひたすら謝る。
もう恥ずかしくて顔見れないっっっ。

「別に、俺は大丈ーー。」
「それじゃぁ、失礼しました!」

それだけ言うと逃げるようにその場を離れた。何か後ろで叫んでいたけど、ここは聞こえなかった事に。


ひゃぁぁあ。私のバカ!!!
抱きしめるって何事よ!大胆すぎるっっっ。
思い出しただけで顔が赤くなる。
アホーーアホーー!!
そう思いながら走るのを辞めて歩き出す。


それにしても…
「笑顔が悲しそうだったなぁ…。」