相変わらず掴めない人だと思った。

小首を傾げて微笑んでいるその姿は美しい女性そのものだけど、あの頃と中身は変わっていない。


「…ありがたいけど、今はやめとくよ。俺、結構楽しいから」

「そっか。残念」


あの頃、キョウはユリの家で暮らしていた。

金銭は何ひとつ出さず、むしろ養われていたけれど、ユリは嬉々としてキョウに世話を焼いていて、そのくせ「出て行く」と言った時は表情すら変えず「そっか」と言い放たれた。


「何?俺のこと連れ戻しにきたの?」

「まさか。懐かしいから会いたくなっただけよ。あれから連絡もないんだもん」

「ユリさんだってしてこなかったじゃん」

「用もなかったしね」


あっけらかんと言われてしまうと脱力してしまう。


「でも、寂しかったよ」

「…ごめん」

「たまに会いに来てもいい?」

「もちろん。俺、ほとんど出てるし」