かつん、とヒールの音を慣らし入ってきた女性。
「久しぶり、キョウ!」
「…ユリさん!?」
驚いたような、どこか笑顔にも見えるキョウの表情。
菜々瀬の心がざわめいた。
「この前偶然、ケンと街ですれ違ってね。
キョウがバーテンやってるって言うから、会いに来ちゃった。
ごめんなさいねえ、迷惑だった?」
「いや、全然。ユリさん、変わんねえな」
「ふふっ、ありがと。キョウは少し大人っぽくなった?」
さらりとキョウの髪に触れる、手入れの行き届いた綺麗な指先。
大人の女性の色香が漂う、綺麗な人。
「大人って。俺もう、今年22だよ」
「あら、もうそんなになるの?嫌だなあ、歳を感じるなあ」
「まだまだ若いくせして何言ってんの」
近い距離で仲睦まじげに微笑みあう二人は、まるでお似合いの恋人同士。
「ちょっ、ケンさんケンさん!」

