一杯目に口を付けた頃、キョウが帰ってきた。


「ただいまです。遅れてすいません」


キョウは二人に気づいたようで、ぺこりと軽く会釈をする。


「お帰りなさい、キョウくん。何かトラブルでも?」

「あー…はい。ちょっと…すいません。これ頼まれてたやつです」

「はい、確かに。ありがとうございます。…お疲れのようですね?」

「ちょっとしつこくて…」

「モテる男は大変ですねえ」


苦笑いよりも苦渋に満ちた表情のキョウと、くすくすと笑うマスター。

二人が状況を呑み込めずにいると、マスターが解説をしてくれた。


「熱心なお客さまには、時々スタッフを追いかけ回す方もいるのですよ」


その言葉に全てが込められていて、恐ろしいことこの上なかったのは言うまでもない…