それでも惚れてしまったの


「あ、菅原さん!ゴミ出し代わります!」

と、雪斗ちゃん
本当によく気が付く

「ゆきちゃん、ありがとう。でもいっぱいあるのよ」

菅原さんは困ったように笑った
ゴミ袋は計4つ
2人で持てばなんとか持てるくらいだ

「じゃあ私と雪斗ちゃんと行きます」

「本当?助かるわ、お願いしますね」

いえいえでは行ってきますと
事務所を出た
ゴミは外の歩道の所にある
緑色の網の下に持っていくと
ゴミ収集車が持ってってくれる

「おはようございまーす!」

「お、今日も頑張ってるね!」

「いえいえ頑張って下さい!」

「今度ご飯でもどう?」

「またまたぁ〜」

などと、すれ違う人に
話しかけられる雪斗ちゃん
私は人見知りが爆発してしまうので
挨拶をした後は上手く言葉を返せない
こんな時一緒に居るととても助かる
エレベーターに乗って下まで降りるのに
何人の人と話したんだろう


「さっきの人はね、5階の佐藤さんだよ!」
外に出てゴミに網をかけながら話した
「すごっ!部署違うのにもう名前覚えたの?」
ゴミを置いた後少し伸びをして来た道を戻る
「うん、私一度見た人は忘れないんだ!」

その特技、本当に欲しい
私はすぐに名前と顔が一致しなくなる
みんな同じ顔に見えてしまうから

言うならば
今目の前の自販機で珈琲を買った人だって
昨日お店に来たタカハシさんに見える
あの身長と体型と髪型と…

そのタカハシさんに似てる人は
珈琲を取り出しこっちを向き目があった
その数秒後顔を覚えられない私でも
全身に鳥肌が立った

タカハシさんだった