喫茶の謎解き意地悪紳士2



詩音が頬を膨らませると、阿部が「はははっ!」と豪快に笑った。

「詩音ちゃん。それはとんだ勘違いだぜ。あいつ、口ではそう言ってるかもだけど、心の中ではきっと詩音ちゃんの役に立ちたいって思ってる」

「あの人が?」

信じられない。

だが、阿部の顔は真剣そのものだ。

「……あいつは人の負の感情ばっかり感じ取ってきた。だから、人から与えられた喜びも優しさも全てを信じられなくて、何か裏があるんじゃないかっていつも探ってたんだ」

まっすぐに受け止められなかった。

人の温かい感情を。

「ああいう性格になったのは、仕方ないことなんだ。……でも俺には分かる。あいつがどれだけ優しいかってことも、どれだけ大切な人を守りたいって思ってるってこともな」

それは詩音にも薄々感じていた。

前回の事件で、詩音に愛の形を教えてくれたのは叶亜だ。

感謝してもしきれない。

恩人なのかもしれない。