「一応、この現場での不可解な点はいくつか見つかりました。なので署に連れていってください。」
「署に?別にいいが、何しにいくんだ?」
不思議そうに聞き返す阿部に冷たい叶亜の視線。
「ほんとにアホの末裔ですね。捜査に決まってるでしょ。先、車行ってますね」
いつのまにか盗んだのか、阿部の車の鍵を指で回しながら部屋を出ていく。
「くそっ。あいつ、いつのまに……」
「阿部刑事。私も一緒に行ってもいいですか?」
悔しそうに髪をかきむしる阿部に詩音は言った。
「……わざわざ許可なんてとらなくても、あいつは詩音ちゃんも連れてく気だぜ?」
「私を無様な方向に導くためですよ。全く、人が真剣だっていうのに」
『手伝う』。それは事件解決のためではなく、はたまた葵の無実を証明するためでもなく、ただ詩音の無様な姿が見たいだけ。
本当に悪趣味。

