「朝ちゃん、どうしたの?」
母から声をかけられ、夕方だということに気付いた。家に帰ってきてからどうやって鞄を置いたのかも、制服から着替えたのかも、何も覚えていない。頭の中を99.9%は王子君が支配している。母に何でもないと素っ気なく答えると母は、ふーん…と意味あり気に言った。なんとなくテレビ画面を見ると電源を入れていないため鏡のように部屋を映し出していた。そこに映る私と目が合う。私は頬が上がっていて、無意識のうちに微笑んでいる。母にそれを見られていたことが恥ずかしくて咳払いをして誤魔化した。
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