「朝王子おはよー」
春のまだ少し寒い朝の空気に、黄色い声が響いた。私は少し驚いて振り返ってから「おはよう」
と、今日もぎこちない笑顔で返事をした。私は通称朝王子こと、大寺原 朝子(おおじはら あさこ)。もちろん歴とした乙女である。
なぜ私がこのように呼ばれているのかというと顔だ。顔なのだ。世にいうイケメンという方々に到底なり得ない顔をしているというのに…。今だに自分では納得できない。髪の毛は癖っ毛で毛先が跳ねてしまうし、おまけに真っ黒。顔はというと目と眉が離れて眠そうな顔をしているが決して目が大きいわけでもない。むしろ一重だ。身長だって164センチ程度で特別に高くもない。
世の女子の好みがさっぱり私には理解できなかった。