入学式。空には雲一つない快晴。大通りから先の方に見える学校に向かって真っ直ぐ歩く。静かな朝にどこからか
「さぁ、来い!!」
と女の子の声が響いた。なんとなく気になった俺はその声の主を探した。大通りから少し入った小さい通りに彼女はいた。木によじ登る彼女の姿はとんでもなく無様で笑いを堪えるのに必死だった。
でも子猫に優しく笑いかけながら手元に手繰り寄せた彼女からは目が離せなかった。髪の毛についている寝癖も、優しげな目元も、不器用そうなその手も、俺は見ていたかった。今もそうだ。