少年は私をジッと見ていた。綺麗なつり目で。
「降りないんっすか?」
そうだった。私が降りてなかった。彼の制服は私と同じだ。このままでは2人とも遅刻してしまって迷惑がかかる。
「ゆっくり降りるんで、先に行ってて下さい」
私は彼にそう告げたが、彼は笑いながら首を横に振り
「そんな真っ青な顔して…高い所怖いんでしょ?」
子猫を地面にゆっくり置いて、私に向かって手を広げて言った。
「おいでー」
「重いよ!?」
気付けば、半泣き状態で叫んでいた。
「だいじょーぶ」
「骨折れちゃうかもよ!?」
「健康保険はいってまーす」
ここで少し笑ってしまった。そして私は「じゃあ遠慮なく」
と言いつつ遠慮しながら木からずり落ちた。